私には、幼い子どもが3人います。まさに子育て真っ只中でありながら、4代目社長に就任しました。社員の皆さんと一丸となって、やり抜く決意と勇気を持って突き進んでいきたいと思っています。弊社初の女性社長となる私の背中を見て、社員の皆さんもプライベートを充実させながら一緒に働いてくれたらというのが私の望みです。
社長就任後、これからの会社のことを社員の皆さんと毎日のように話すのですが、社員の皆さんから「わくわくします」という言葉が出ると社長である私も本当にうれしく思います。そういった前向きな言葉がたくさん飛び交うような企業を育てていきたい、そしてそれを導ける社長でありたいと背筋が伸びる思いです。一人ひとりから湧き出るわくわくの連鎖がこれからのエトウの100年、200年を支えてくれると思っています。
エトウが本社を置く福岡県・大川市は、日本有数の家具のまちとして知られています。九州地方最大の河川「筑後川」の下流に位置する大川市には、上流から筏に組まれた木材が運ばれてきていたため、物資はもちろん、木工や船大工などの職人が集まってきたそうです。のちに家具のまちと呼ばれるようになったのは、こうした船大工の技術に導かれたおかげともいわれています。
500年近く、そうした歴史を紡いできた大川の町で、エトウは、大正9(1920)年に創業しました。最初は、製材業からはじまり、創業から約70年が経つ昭和62(1987)年、製材業から自社の木材の販路を拡大するために、家具製造を開始しました。しかし、ちょうどその頃、バブルが崩壊し、地元の家具製造企業は相次いで倒産してしまいます。その数は、6分の1ほどに減り、100以上あった製材所も10ほどに激減しました。当社もかつてないほどの苦境に立たされました。しかし、「こんなときこそ変化を求め、挑戦するべき」と先代が決断し、住宅・建材事業部部門の設立、家具の輸出輸入業の開始など常に前進し続けてきました。
挑戦を続けた結果、現在ではオンラインショップの運営会社、酒の小売店、不動産会社など、異なる事業を行う5つの子会社があります。
それぞれの強みを活かし、協力し、グループで一丸となって挑戦していく。こうしたチャレンジ精神の源は、創業直後に世界恐慌という荒波を乗り越えてきた初代創業者から受け継がれています。「苦しい時こそ一歩踏み出す」精神は今もなお社員一人ひとりの心に深く刻み込まれています。
近年の日本は、昔に比べて活気が足りない気がします。今後はおそらく労働人口もマーケットも小さくなっていくと予想されています。しかもそこから目を背けても事態は変わりません。日本の今を受け止め、私たちにできる変化変革に取り組み、希望が持てる未来のバトンを次世代を担う子どもたちにつないでいきたいのです。
それに備えて弊社では、国内だけでなく海外の市場のニーズにも応えるような商品を生み出そうとしています。海外に進出し、大きな成功を収めることは、名だたる企業でも容易ではないので、今後私たちは、海外での販売に協力してくれるいいパートナーを見つけたり、会社全体でグローバル化に取り組むために語学教育にも力を注いでいきます。
また自然の恵みのおかげで仕事をすることができている私たちだからこそ、地球環境を守り、その大切さを次世代に伝えていく取り組みも行っています。植林をおこなったり、子どもたちを招いて木に触れる機会をもうけたり、社内の敷地に畑を作り、無農薬で野菜を育て、社員やその子どもたちと一緒に収穫したり、みんなで餅つきをしてつながりや絆を育むことも大切に考えています。
変わりゆく時代の中でこれからも壁にぶつかることがあると思いますが、その度にしなやかに、百年企業の誇りを忘れず、私たちらしいやり方で乗り越えていきたいと思います。